狭心症問診
虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)の診断には、問診が不可欠です。
発作時の心電図がとれれば一番わかりやすいのですが(症状消失時には、正常なことが多いため)、受診には症状がないことがほとんどです。そのため、症状が出る時の状況が大変重要です。痛みの性質、どういう時に出現するか、どのくらいの頻度で出るか、どれくらい続くか、どうしたら消えるかなど詳しくおききし、お答えいただくことで、迅速に診断することができます。
緊急性があると判断された場合は、入院し精査可能な病院への搬送となります。
緊急性のない場合は、ホルター心電図(つけている時に発作がでればその時の変化で判断できます)、運動負荷心電図などをおこなっていきます。その他、心臓の機能を確認するため心エコーも行います。
冠動脈に狭窄が疑われる場合は、心臓CTや冠動脈造影の施行を他病院にお願いします。
1.狭心症の症状
狭心症の症状は以下のように表現されます。
一方、「チクチク」「キリキリ」「ズキズキ」など刺すような胸痛や「ズキン」「キュッ」など瞬間的な鋭い胸痛などは虚血の可能性は低いと言えます。 ずっと続くような胸痛で心電図や採血で異常がない場合も否定的です。
2. 狭心症発作の持続時間・頻度
狭心症発作の持続時間は比較的短く、ほとんどが10分以内です。 労作性狭心症では発作の多くは労作をやめれば5分以内に消失します。
労作をやめても発作が10分以上持続する場合や安静時に発作が生じた場合は不安定狭心症と判断されることがあります。 月に1~2回と発作回数が比較的安定していた狭心症が急激に頻度を増した時は、不安定狭心症の可能性があり、速やかに専門病院への受診が必要です。
3. 狭心症症状の自覚部位・放散
狭心痛を感じる部位は胸骨裏面を中心とした胸部中央に最も多く認めます。 その他、左前胸部、心窩部、喉や頚部、左肩、左上肢内側、下顎、歯、右前胸部や背部などがあります。
どういう状況で痛みが出て、消えるかも重要です。 狭心痛の範囲は比較的漠然としており、一点あるいは硬貨大の範囲で示せることはほとんどありません。
4. 狭心症発作の誘因
労作性狭心症は一定の身体的労作(運動、仕事、掃除など)のほか、食事・排便・性交・入浴・精神的な興奮・ストレス・寒冷などが誘因となって起こります。 歩行中に狭心痛が生じて1、2回休むとその後は同じ速度で歩いても発作が起こりにくくなったり、歩行開始後数分で狭心症発作が起こるが、歩行速度をゆるめて歩き続けると狭心痛が消失することも少なくありません。 これらは、狭心症に特徴的です。
冠攣縮(動脈のけいれん)を原因とする異型狭心症(冠攣縮性狭心症)では特別な誘因なく安静時、特に夜半~明け方、睡眠中に発作が起き易いという特徴があります。発作のために覚醒することも多くあります。また、アルコール摂取・過換気・喫煙・過労・ストレス・寒冷暴露などが、冠動脈の攣縮を誘発することがあります。
労作性狭心症では、発作の誘因となった労作をやめるか労作の速度を落せば通常数分以内に狭心痛は消失します。消失しない場合は心筋梗塞に移行する可能性があり即受診が必要です(救急車の方がよいです)。 異型狭心症も10分ほどで収まりますが、出たり消えたりを繰り返し完全に症状が消失するまでに、10分以上かかることもあります。
労作性狭心症・異型狭心症いずれも、ニトロ(ニトロペン・ニトログリセリン)を舌下あるいは口腔内にスプレーすることで冠動脈が拡張し、発作はいっそう早く数分以内に軽快消失します。 ニトロを数回続けて使用しても発作が持続する時は、急性心筋梗塞の恐れがあります。あるいは、狭心症以外の疾患の場合もありますが、それは心電図や採血で判断できます。