心房細動について
心臓から全身へ血液が良好に流れるには、心房と心室が規則正しく収縮することが必要となります。心房細動とは、その心房が「ふるえているだけで、収縮しない」状態となり、リズムがバラバラになってしまう不整脈です。主な症状は、動悸・息切れ・自分で脈をはかった時の「脈の乱れ」・胸部不快感などです。特に脈の速い時に症状が多く認められます。ただ、全く無症状の人もいます。
最も重要な点は、心房細動になると脳卒中を併発する危険性が5倍に増加することです。 心房の規則的な収縮がなくなることにより血流がとどこおってしまうと心房内に血栓が形成されます。その血栓がある時はがれて、動脈の血流に流れ出て脳血管などの動脈を詰めてしまうことを塞栓症といいます。臨床的には脳塞栓が主ですが、両上肢・下肢・腹部などあらゆる動脈の急性閉塞の原因となります。
また、脈拍の速い心房細動が長く続くと心不全を発症することもあります。 心房細動になる率は年齢により徐々に増加します。心臓の病気がある場合が多いのですが、甲状腺機能亢進症や慢性閉塞性肺疾患など心臓以外の病気に合併する場合も少なくありません。明らかな病気のない心房細動も10%程度存在します。心房細動といわれた場合には、症状がなくても心臓や他の病気の有無を精査した方がよいでしょう。
心房細動の出方には、主に、発作性(普段は正常で、突然心房細動になるもの)と慢性(持続性/永続性)があります。発作性心房細動は、過度の飲酒や喫煙、ストレス、過労、不眠などをきっかけに発症することがあります。 通常数年の経過で発作性から慢性の心房細動へ移行しますが、それぞれの段階及び自覚症状によって治療方法も違うため、その人にあった治療を選ぶことが重要です。
心房細動の治療では、この血液をサラサラにする抗凝固療法が非常に重要です。
洞調律(正常なリズム)に戻った後もしばらくは血栓・塞栓症の危険性は残ります。心房細動が起こってから48時間以内であれば、心房の中に血栓ができる可能性は少なく、洞調律に戻った後に塞栓症を起こす危険性は低いと言われています。48時間を超える場合は、3週間以上の十分な抗凝固療法を行う必要があります。そのため、いつから心房細動になっているかが、非常に重要です。